何故買ったのか、長い話はここではしない。
家に持ち帰って、透明のプラスチック袋から中身を取り出した。
中に一緒に入っている商品の写真やら説明を仔細に眺めていたら、
ドイツ語ではパジャマとは言わないのかも。
Schlafanzug と表現してある。
日本語に訳せば、「寝着」だろうか。
「寝着」を日本語カタカタに訳すとパジャマになるのだろうか。
ヨーロッパは他の国々でも同じものがドイツから輸出販売されているということなのか、
イタリア語では Pigiama、
フランス語では Pyjama、
オランダ語では Pyjama と表記されている。
つまり同じ品が少なくとも4ヶ国で入手できるということだ。
イタリアの人も今、私が身に着けている同じ柄のパジャマで身を包んでいるだろう。
Certo! Certamente!
フランスの人も? Mais oui, bien sûr!
* *
ドイツ語の簡単な取り扱い説明を見ると、
まず Separat waschen と出ている。
洗濯方法を指示しているのだろう。
色物だから白物と一緒には洗うな、
ということだろうと理解した。
白物と一緒に洗うと色物の代物になってしまうのだろう。
まだ実験はしていないが。
尤も洗うのはわたしの役ではない。
我が奥様が電気自動洗濯機を利用するだけのこと。
*
「新しく買ってきた衣類等は着る前に洗濯しなければならないのよ」と
言う。
どうしてそんなことを言うのだろう。
昔からの伝統?
「まだ新品だよ。汚れたら洗えばいいんだよ。
電気と水を節約しなければ」とわたしは軽く反論。
*
次、取り扱い説明には、
auf links waschen und bügeln とも記されている。
おやっ、と思った。
これはどういうことだろう?
auf links waschen
auf links bügeln
この二つの行為を一緒にまとめて、
auf links waschen und bügeln と指示しているのだろうか。
上で言及した Separat waschen に続いて、auf links waschen という指示。
別に難しい単語で書かれているわけでもない。
どの単語の意味も一応知っている。
でも、3語一緒になった、この指示 auf links waschen 、
これは意味がよく取れない、というより面白い言い方だと思った。
なぜ面白いと思ったのかというと、
洗濯するに links 左、または左側とはこれ如何に?
と思えたからだ。
左側に洗濯せよ?
そんな風に文字通りには読み取れるけれども、
左側に、ってどういう意味なのだろう。
*
links という単語は知っている。
links があれば、 reichts もある、序に思い出す。
だから auf rechts waschen という言い方もあるのかも?
auf rechts bügeln も?
とにかく auf links waschen とはどういう意味なのだろうか。
面白い表現だと感心してしまった。
新たなパジャマを自分で購入して、こうして新たなドイツ語表現に巡りあう。
新鮮な驚き、発見、感動であった。
Links abbiegen! 左折するのよ
Auf links waschen!
左側に向かって洗え!? 左側へと洗って行け?
直訳して理解しようとしても、具体的にはどうするのか、全然意味が通じない。
だから直訳は諦め、想像力を動員することが求められているのだろう。
そして、その通りだと分かった時には、やっぱり! と正解出来ていたことに一人ほくそ笑む。
*
auf links waschen und bügeln
左側に向かって洗ったら、次は左側に向かってアイロン掛けしろ?
相変わらず、”左側に”に拘っている。
左から順々に洗って行って、右側へと洗濯の選択幅は移動して行く?
左側に向かってアイロンを掛けろ?
これはどういうことだろう。
でも、どうして auf links waschen なのだろう?
誤植ではないよね。
*
links という単語、どうも印象として、
間違っている、異なっている、正しくはない、普通ではない、変だ、
といったようなどちらかと言うとネガティブな意味が込められているかのように
感じられるが、どんなものだろう。
そのドイツ語翻訳版を読んでいたら、
22才のヒローイン(アナスタシアという名前だったと思う)は
インタビューをするためにドアーをノックせずに、
その人物(クリスチャンという名前だったと思う)のオフィスの中に入る時、
躓いた。
床に両手、両膝をついて倒れた。
彼女、こう曰われた。
"Scheiße! Zwei linke Hände, zwei linke Füße!"
と自分のドジぶりが思わず口から出る。
左手2本、左足2本!
彼女には右手も右足も利かなかったらしい。
英語ではどう表現しているのだろう。
この表現も面白い。その状況を序に思い出せばもう忘れられない表現に違いない。