ドイツ語で「パン移動販売車」は? 「鶏卵移動販売車」は?
住宅街をゆっくりと移動して行く車。
別に拡声器で「ご近所をお邪魔しております云々云々」
といった宣伝は聞こえてきません。
ここは地元オーストリア。小都市部。
家の中に居て、聞こえてくるとしたら、
それらしき合図なのでしょう、
ご近所の、我家の前の、道路をゆっくりと
通過して行くかのようにして、
クラクションを遠慮そうに一、二度鳴らしています。
家の中に居て、今日もその車が来るのを待っていた人、
またはお店へと直接出かけて行くのが面倒くさいので、
その車がたまたま近所にやって来たのを聞きつけて、
ご近所の方がちょうど車に合図を送ったのでしょう、
パン、買いますよ、と。
我家の代表も家から飛び出して、車の後を追う。
日本での、子供の頃、ラッパのメロディーが聞こえていた。
やはり近所を移動していた。
おじさんがラッパを吹きながら重そうな自転車を同時に漕いでいる。
後ろの荷台には豆腐の入った木箱。
底がちょっと凹んだ年期の入った鍋を母親から渡され
それを持って豆腐売りのおじさんのところへと派遣させられた。
なんとなく気恥ずかしかった。
ご近所のおばさんたちも何人か、おじさんの豆腐の木箱に群がっていた。
このゆっくりと移動している車、
日本語では何と言うのだろうかとググッてみたら、
パン移動販売車」がヒットしましたね。
想像力を利かして別の言い方を検索しましたが、
ヒットしませんでした。これが日本語の定訳なのでしょう。
ここオーストリアは我が近所に、いつの頃からか、
この「パン移動販売車」がやってきていた。
定期的に、ある週日の、
ある時間帯にやってきていたのだろうか、
そこまでは確かめていなかった。
朝食のテーブルにつくと新鮮そうなパンが何種類か、
紙袋に包まれたまま置いてある。
街中のパン屋さんまでわざわざ出かけて行って
買って戻って来たのだろう、
と自分なりに思い込んでいたら、
そうではなかった。
「パン移動販売車」がやって来ていたのを
ちょうどタイミング良く捉えたそうな。
さて、我家はもうお得意さんではない。
何年か前まではその購入の簡易さの所為か、
移動車がやってくる度に飛び出しては買っていた。
いわば習慣化してしまった。
運転手君にとっては良き顧客の一人であったことだろう。
この界隈にやってくるのが楽しみであったことだろう。
* *
スウェーデンの作家、Stieg Larsson、スティーグ・ラーション。
いわゆる「ミレニアムシリーズ 」ミステリー小説3部作を著した。
世界中の?読者をワクワク、ドキドキさせた。
わたしも読者の一人であった。
同作家は第4作目も執筆(予定)中だったという。
2004年11月に亡くなってしまった。
今年(2015年)になって、その第4作目(?)が出版された、と言われる。
英訳版→
作者はラーション家からの執筆の許可とご指名を受けた、
スウェーデンのベストセラー作家の
David Lagercrantzという。
同シリーズの主人公の一人は、
ジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィストだ。
第一作、二作、三作と、もう一人の女主人公、
リザベット・サランダーと共に大活躍をした。
さて第4作ではどうなのか?
ブルムクヴィストも年を取った。
自分もそして周りの状況も変わった、ということなのか。
最近は雑誌の仕事の方もあまり順調ではないようだ。
ある日のこと、2、3時間しか眠っていない。
エリザベット・ジョージを読んでいたからであった。
あのエリザベット・ジョージのスリラー作品を読んでいた、という。
第4作中の、架空の人物、その主人公のひとりが
実存する作家の作品を時間つぶしに読んでいる、
しかも実にグッドなスリラーだ、と感心している。
これは面白いと思った。
何故かというと、ブルムクヴィストが読んでいたという
Elizabeth George エリザベット・ジョージの最新作をちょうど わたしもドイツ語訳で、
そして英語原文でも並行して読んでいる
最中であったからだ。とっても長い、でも面白い。
さて、更に予想していなかったことを発見した。
エリザベット・ジョージの最新版、
ドイツ語訳を読んでいたら、
「パン移動販売車」というドイツ語単語を
偶々と言うのか、だから偶然と言うのか、
それとも当然とでも言えようか、発見した!
誰かに見出されるのを今か今かと
息を凝らして待っていたかのようでもないだろうか。
無意識のうちにも捜し求めていたドイツ語単語が目の前にあった。
エリザベット・ジョージを読んでいなかったら
まだまだ先のことだったろうか。
口を閉ざしたままだったが、歓喜の声を上げた。
「パン移動販売車」
ドイツ語ではそういう風に表現するのか!?
知って見れば飾り気もなく実に素直。